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「ふー。
サヘキは良い街じゃのう。
ゴマダシ=ナムプラーといいこの松並木といい、わらわを歓迎してくれているようじゃ。
…是非ともドリチャンとチットにも見せたいものじゃ」
グラロークのにこやかな表情に、ほんの一瞬だけ影が差す。
しかし静乃は敢えてそれには触れず、微笑を浮かべつつ口を開く。
「姫様のお友達ですか?」
「うむ。
ドリチャンはこの国で初めて出来た友達じゃ。
馬と話せる不思議な子でのう。
カイヘイ65期に未来の旦那様がおるそうじゃ」
にこやかにグラローク。
静乃もユリネも、ごく自然にそう口に出来るドリチャンなる少女を、ちょっぴり羨ましく思う。
それを知ってか知らずか、グラロークは言葉を続けた。
「チットはわらわの侍女じゃが、姉のようなものでもある。
…わらわを置いてどこに行ってしまったのじゃチット。
わらわが嫌いになってしまったのかのう…」
いつしか涙ぐみながらグラローク。
佐伯の街に罪は皆無なれど、その落ち着いた佇まいは思わぬ形にてグラロークの心を刺激してしまったようであった。
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