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午後3時過ぎ。
日は未だ真上にあった。
五人の江田島健児は陸攻と真之の組とみさきと醇一の組とに分かれ、那覇市街を哨戒している。
一口に哨戒といっても、彼等は水偵はもちろん側車付きオートバイにも馬にも乗ってはいない。
最低限の補給こそあるものの頼れるのは自らの足のみ。
娑婆の若者であったなら喫茶店での休憩を挟まねばやっていられないであろう哨戒だが、そこは江田島健児もう何時間も行動している。
ごく普通の観光客を装いつつ、那覇市街を隅から隅まで哨戒するが如く。
伊達にカッター操練や5哩遠泳、そして古鷹山登山で心身を鍛えてはいないのだ。
「小十郎君。
小公女って読んだことあるかい?」
「はい。
金満家の息子でこそ御座いませぬが、拙者もセーラ=クルーと重なる部分がありますが故に」
藪から棒以外の何物でもない陸攻の一言に、何ら首を傾げる事もなくそう答える真之。
様々な意味にて、伊達に陸攻と親しくしている訳ではない。
そんな後輩の様子に安堵しつつ陸攻は言葉を続けた。
「確証がある訳ではないけど、姫様は学校なんか二度と見たくなくなるような目に遭わされたのでは…
と思うんだ」
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