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「はるこさん?
ああ、クマのはるこさんだね?」
智の言葉に碧がにっこりと笑って頷いたのはもちろんである。
その直後であった。
二人の耳に
「彼女に何の用だ貴様ら。
返答次第では俺の監視下に置く」
…という押し殺した男性の声が聞こえる。
智次いで碧が振り向くと、そこには第二種軍装を纏った目つきの鋭い男性が立っていた。
智は
(また海軍大尉かよ…
去年の大阪駅といい新坂って奴といい今といい、海軍大尉と関わるとロクなことがない…)
と内心呟くも、まさか碧を置いて立ち去る訳にはいかないから、出来るだけ堂々としつつゆっくりと口を開く。
無論挙手の礼を執りながら。
「海兵65期、成田智2号生徒です。
クマのはるこさんとは、こちらのお嬢さんの恩人ならぬ恩熊です大尉」
「はるこさんは軽井沢に住んでいますので、何の用だと仰られましても…」
去年智と知り合う前の碧であったのなら、とてもこのようにはっきりとは答えられなかったであろう。
長髪から僅かに覗く大尉の右目と押し殺した声とに怯み、ガクガクと震えながら言いたい事の半分も言えなかったに違いない。
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