褐色の豆台風。

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軌間762㎜の鉄路をえっちらおっちらと行く無蓋車の上は流石に暑いのだが、その代わり嵐山と静乃は抜けるような真夏の青空を独占しているような気分を味わう事が出来ていた。 流石の阪急も、こればかりはそう簡単に真似が出来ないのではと嵐山は考えている。 車体に白い帯こそ巻かれてはいないものの、二人にとって今揺られている無蓋車は省線の一等客車にすら匹敵しているに違いなかった。 そんな二人を応援するかのように、垣戸島西海岸沖には幾つかの艦影が浮かんでいる。 その理由までは分からないものの、嵐山にしてみれば恰好の話題が向こうから来てくれたようなものであった。 小さな混合列車は相変わらずえっちらおっちらと動いてはいるが、阪急神戸線のノンストップ特急や新京阪のP-6形電車、そして省線の42形電車の優速を知る嵐山にとっては歩いているのとそう変わらない。 「あれが高雄型一等巡洋艦で、その後ろが北上型二等巡洋艦。 んで、北上型の後ろに続いとうちっこいのが吹雪型駆逐艦が二隻…いや、ちゃう! 一隻は初春型ですわ。 ? フリゲート艦なんて帝国海軍におったんかいな…」
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