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「長さん、通信科の棚から無断で双眼鏡を持ち出さないでくれと何度言えば…
それに、誰がレンズ磨きの手を抜いただって?」
「うわ!
いつからそこにいた園田貴様!?」
「………」
大山崎の思いもよらぬ言葉に、園田通(そのだ=とおる)通信長が思わず呆れたのは言うまでもない。
そんな彼等の様子を、少し離れた場所から褐色の肌を持つ青年が微笑ましげに見ていた。
纏っている明らかに帝国海軍のものではない軍服と彼自身から放たれている身なりに頼らない気品とが、彼が高貴な立場の人間である事を雄弁に物語っていた。
やがてそんな彼に、上にランニングシャツ下に白い軍袴をそれぞれ纏った中年の男性が声をかける。
白い略帽の徽章が桜に錨で鉢に沿い二本の黒い線が巻かれている事から、彼が士官若しくは特務士官である事が窺えた。
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