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「如何です殿下?
摩耶の家族はいい奴ばかりでしょう?」
中年の士官…摩耶機関長高槻巌(たかつき=いわお)特務大尉がそう問い掛けると、殿下と呼ばれた青年は高槻に右手を差出しつつ口を開く。
「はいタカツキ機関長。
本来あちらの艦に乗り込むべき私を、マヤにお招き下さり感謝いたします。
皆様にチューレンを進呈するのも、そう遠い話ではないでしょう」
単縦陣の最後尾を行くフリゲート艦らしき艦影を見ながら青年。
ちょうど緩い回頭が始まったばかりらしく、摩耶艦上からは後続の艦を全て見通す事が出来る。
やがて高槻が口を開いた。
「中練!?
王族ともなると流石にスケールが違いますな殿下。
ですが、ウチにはもう水偵がありますから、赤トンボを貰っても…」
慌てて油塗れの右手を腰にぶら下げた手拭いで擦りながら高槻。
そんな彼の姿と12糎単装高角砲座の様子とを交互に見ながら、殿下と呼ばれた青年は太陽のような微笑を浮かべるのであった。
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