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そのトクニの寮にてとある事件が発生したのは、夏休みが始まってすぐの事であった。
その理由は今のところ不明なれど、一人の女子留学生がある日忽然と寮から姿を消してしまったのだ。
親元に連絡してもなしのつぶて。
田舗一族の情報網を駆使し血眼になって捜索を続けてはいるものの、暦が7月末日となっても未だ彼女が発見されたという報告は田舗理事長の元に届いてはいない。
事を公に、すなわち警察に捜索願を出さない…もとい、出せないのには、その善悪は別として学院なりの理由があった。
その女子留学生はよりによって、とある国の王族なのである。
こんな不手際が世間に広まってしまったら…
当然田舗一族そして学院の全職員達には厳重な箝口令が敷かれ、殆どの生徒は事件の事など知る由もない。
しかし…
「理事長先生」
「彼女の捜索に、是非とも私たち清楚寮黄帯会(きのおびかい)を加えて下さいませ」
「その代わり彼女を発見した暁には、私たち三名に課せられた色々な制限を…」
普段の田舗理事長であったのなら、トクニの中でも特に札付きである連中の言葉など一笑に付していただろう。
しかし追い詰められていた田舗理事長は事件の解決を焦る余り、それこそ溺れる者はなんとやらの例え通りに、別名尚且つ蔑名トクニ三凶党が女子留学生捜索に加わる事を認めてしまう。
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