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その光も収まらぬ内に、気配が部屋の中に飛び込んできた。それを察知できたのはアネスだけだった。
相手だって見えていないはずだ――寸前で閉じた目を開けることもできずにアネスは気配を頼りに銃口を向ける。この光の洪水の中、唯一機敏に動く気配に向けて。
発砲――手応えは分からない。しかし気配は止まらない。まるで見えているかのように、真っ直ぐアネスの元へと肉薄する。
「――ちぃっ!」
微かに耳をさすノイズは風切り音。アネスは勘だけで状態を反らす。体のあった場所を袈裟切りに怜悧な一閃が走った。
返す刃の軌跡を予測し、アネスは腕を振るう。腕間接の感触。切っ先がジャケットの裾を裂いたのが分かった。相手がアネスの足を払う。よろけながらも、アネスは凶器を持つ腕を取りながら巻き込むようにして押さえ込む。
光の中の攻防――誰にも何も見えていない世界で、アネスと賊は揉み合う。
しかし、均衡はすぐに崩れた。体重を掛けて押さえ込もうとしたアネスの体は、凶器を振るう賊の腕一本で持ち上げられる。振り払うように振るわれた腕と、引き剥がすような腕の力。
ふわり、とアネスの体が引き剥がされる――彼は死を覚悟した。
そして、その結末は当然と訪れる。
光が収まったのはほんの数秒後。しかし既に大勢は決していた。クルーエル卿とアネスの部下達。彼らが見たものは、返り血に染まった赤い影と怜悧な煌きを放つ日本刀が、アネスの袈裟を深々と胸の真ん中まで裂いていた姿だった。
赤い影は、閃光が収まった事を理解し、仕留めた相手の体から日本刀を引き抜こうとして――
「ア、アネスッ!!」
クルーエル卿が叫ぶ。
アネスの腕は、しっかりと赤い影の腕を掴んでいた。自身の体から、食い込んだ刃を抜かせまいとするように。
ゴポッ、と血の塊を吐き出し、しかしアネスは最後の力を振り絞るように叫んだ。
「――撃てえぇぇっっ!!!!」
動きが止まったその一瞬、アネスが命を賭した隙を、彼の部下達は逃さない。一斉に抱えたサブマシンガンを向け、ミシンのオーケストラのような発射音と共に鉛弾を吐き出す。
数百もの弾丸が赤い影と、今わの際のアネスへと殺到する。
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