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下手くそな操者に操られたマリオネットのように、アネスと赤い影は躍る。カクカクと、小刻みに。
弾丸の雨を受けながら、アネスはその光景を見た。
「…ばか…な……」
口から漏れた言葉を最後に、アネスは崩れ落ちる。
その様子は、水面に撃ち込まれる弾丸に似ていた。
赤い影に殺到した弾丸は次々と彼の体に風穴を空けていき――瞬きの間に、その穴は塞がっていく。
弾丸が通り過ぎた後に残るのは、血の一滴さえ流れず、微かな傷跡さえ見えない無傷の体。まるで何事も無くやり過ごした、実体のない幽霊のように。
力が抜けたアネスの体を蹴り飛ばし、赤い影は日本刀を引き抜く。悠然と。嵐のような鉛弾を、文字通り雨を受ける程度のわずらわしさのように。
ガキン、と音が鳴れば、大体同じタイミングだった。弾切れが起こる。何事も無かったように佇む赤い影に、男達は歯を鳴らした。
リロードが覚束ない男達をぐるりと見渡し、赤い影は油断無く動く。振り上げた刃は、そのまま男達の1人の首を刎ねた。
――世界はただ赤く、絶望の悲鳴だけが支配した。
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