第二章

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     《11》  シックで落ち着いているが、いかにも値の張りそうな内装。いつも思うのだが、ひょっとしてブレイド大佐は金持ちなのだろうか。  そんな事を思いながら、ブレイドの執務室で2日間の短い内偵の結果を持ち帰ったデビットが、とりあえずの報告を終える。  机の向こう、革張りの椅子に背を預け、ブレイドは難しい表情をしながらしばらく何かを逡巡するように沈黙していた。  やはり自分の戦う相手が不死身の怪物というのは、いかにこの古強者の大佐であっても戦慄を覚えるものなのか――そんな風に思っていれば、なるほどな、とブレイドが溜め息のような声を漏らす。 「そうか…共存派は今、そんな事になっているのか」 「って、そっちですかい」  思わず声を漏らしたデビットに、じろりとブレイドが視線を向ける。 「何か?」 「いえ、てっきり自分らの敵について難しい顔をなさっていたものと」  ああ、とブレイドはさほど興味もなさそうな声を上げる。 「不死身というだけなら、別段大した問題ではない。別に殺せと言われているわけではないのだからな」 「そういうもんですかい」 「少佐、君はこの話を聞いて、どんな対処法を思い付いた?」  言われて、デビットはあごひげを撫でる。 「そうですな…ま、殺せないなら適当にふんじばってどこかに監禁しときゃ解決かな、と」 「それでいい。確かに…頭が切れると言う話は注意すべき点でもあるし、彼には事を成すに必要な手足も財力も備えている。そしてそれは、きっかけは間借りしたものとはいえ彼が作り上げたものだ。警戒すべき相手である事は間違い無い」  言いながら、ブレイドは立ち上がり窓の外を見やる。  外は夜の帳が落ちている。2人のいる軍事基地からは街の灯は少し遠いが、今は夜も盛りといったところだろう。また街に飲みに出掛けたいもんだ、などとデビットは思う。バー自体は基地内にあるし慣れた雰囲気は嫌いではないのだが、まあ、たまに外食したくなるような感覚なのだ。 「我々吸血鬼が人間にとっての脅威となっているのは、ひとえに知性を持ち合わせているからだ。自分達と同じ知性を持ちながら、それ以上の能力を持ち合わせている。つまり人間が我々に抱いている感情は、我々が石弓涼斗に抱く感情と同じと言える」
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