[幻惑の返却者]

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クロトは頬を掠った槍を掴んでいた。 そしてリズサンの背中にバタフライナイフを突き立てた。アレックも同様に、シモンサンの背中を手刀で貫いていた。 エレナ「クロトォオオ!!!」 私の怒号と共に、周囲の人々の悲鳴が響く。 私の隣でキーロン様が双銃を出してクロトとアレックに撃ちまくった。 アレック「逃げるが勝ちだな~。」 アレックはクロトの前に出て背中で魔弾を受けた。続いて私兵部隊の様々な魔法がクロト達に放たれた。 クロト「あ~はっはっはっ!」 クロトの笑い声を残し、アレックとクロトはシモンサン達の遺体と共に転移した。 カランカランと、クロトが持ってた私の槍だけが、その場に落ちた。 私は力無くうなだれた。 死ぬ間際、私を見るリズサンの目が私の脳裏に刻まれた。 エレナ「クロト!クロト!」 両手で地面を何度も叩き、また守れなかった自分と、クロトへの怒りを地面にぶつけた。 キーロン「お嬢!やめとけ!あんたのせいじゃねぇ!」 キーロン様は私の両手を掴んで止めた。 エレナ「私のせいなんです…私の…。守ると誓ったのに…。」 キーロン「まだメルライトにいるなら、俺らが捕まえる。お嬢は休めや。」 それから放心状態でしばらく座っていた。 ゴルリムやキーロン様が何か言ってたけど、私の耳には聞こえなかった。やがて重い足取りでリズサンの民宿に歩き出した。 真っ暗な民宿に入り、私達の部屋に入った。 明かりを付けると、ロークとルカチャンの姿はなく、荷物も無くなってた。 置いて行かれた? 私は戦いの疲れが噴き出して、大の字に寝転がった。 これからどうする? いえ…先の事は解らない。クロトが何を考えてるのかも解らない。思えば私は何も解らないわ。 まず体力の回復が急務…それだけは確か。 そんな事を思いつつ、私は眠りに着いた。 ーーー [ミラクルガーデン]前 翌日12:00 ゴルリム「本当に行くのか?」 エレナ「はい。友を守りに。」 キーロン「お嬢…武運はいらねぇよな?天運がありゃ…。またメルライトに来たら、ここで会おうや。」 エレナ「必ず伺います。色々とお世話になりました。ゴルリムも、ありがとう。」 私はグラディウスに向かう事にした。ライカサンを救うため。クロト達の助けがなくても。 ゴルリムが転移屋を呼んでくれた。そこまで優秀じゃないって言うけど、歩いて行くよりは全然助かるわ。メルライトからグラディウスの7割は飛ばしてもらえる。 転移屋「準備OKです。」 エレナ「はい。お願いします。」 ゴルリム「気を付けてな。」 ゴルリムとキーロン様に見送られ、私は転移した。
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