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江美里は、学校でいじめを受けていた。
それでも彼女は、休み時間にじっと机に向かって座っているようなことはしなかった。
仲間に入れてもらえないのがわかっていても、一緒に体育館に遊びにいったし、誰も来てくれないのがわかっていても、お誕生会の案内状を一生懸命に作っていた。
そんなに頑張らなくても良いんじゃないかと言ってやりたいときもあった。
世の中にはもっと頑張っている人がいるのだから負けずに頑張れなんていう言葉は無意味だと思う。
その時点で先生として失格な私を、江美里はなぜか慕ってくれた。
事故のあとすぐに江美里は父親の実家のある旭川に、父親と二つ違いの弟と一緒に移り住むことになった。彼女の父親からの電話で報告を受けた私は、江美里を励ますことも、さよならを告げることもできなかった。
それからのことは、二年前偶然に再会した後に、江美里から断片的に聞かされた話をつなぎ合わせて私なりに理解した。
祖母はすでに他界していて、父親が仕事をしている間は祖父が姉弟の面倒を見てくれたこと。
祖父は二人を可愛がってくれたけれど、男ばかりの家の中で、江美里は母親の役目もこなさなければならなかったこと。
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