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私は二人が離婚しないことが不思議だった。
母は父を散々に罵り、家から追い出しておきながらも、父に恋人がいることがわかると今度は外出を必死で引き留めた。
教師という職業が、二人の歯止めだった。何もかもを捨てるには、二人とも気が小さすぎた。
私は子供の頃から、父と母のためにも、そばにいてはいけない気がしていた。
でも本当は、私自身が楽になりたかっただけだった。居心地の良い場所が欲しかった。
居心地が良いという意味では、達郎は理想の相手だった。
大学に入学した私たちは、写真のサークルで知り合った。わりとおとなしいタイプが集まるサークルの中で、まるで中学生みたいな交際が始まった。お互いにはじめて付き合った相手だった。
私も達郎も、もてるタイプではなかったから、嫉妬や不安とは縁のない毎日だった。
それが永遠に続く気がしていたけれど、本当に十年も続くとは思わなかった。
気がつくと達郎は小学校の先生になっていて、私はアルバイトをしていた旅行雑誌の出版社にそのまま就職していた。
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