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「そろそろ潮時だと思ってるんだ」と日下部さんが、いつになく力のない声で言った。
「今まで夢中でやってきたけど、そろそろ歳かな」
「そんなことないですよ。日下部さんはいつだって元気じゃないですか」
「これまで順調だったからって、つい手抜きをしそうになるんだよ。一度手を抜いてしまえば、だめになることはわかっている。でもこの頃、俺はなんのために働いているんだろうって、そればっかり考えてる」
「日下部さんのためじゃないですか。それに、家族のためじゃないですか」
「うまくいってなかったんだよ、俺たち。離婚っていう決断が、こんなにエネルギーを消耗するものだとは思わなかった」
「離婚したんですか?」
日下部さんが呟いた離婚という言葉は、あまりにも突然で衝撃的だった。
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