1 へいわな日常

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達郎の名前に一瞬ドキリとする。 江美里は達郎のことをタッちゃんと呼んでいる。 やはり、その話題になるだろうとは思っていたけれど、どう説明したら良いのか、考えがまとまっていなかった。 でも、そんなことも全部、江美里には見抜かれているのかもしれない。 二十歳になったばかりだというのに、江美里は他人の気持ちに良く気づくのだ。それでも傷口に直接触れるようなことはしない。だから私はつい江美里が年下であることも忘れてしまう。 達郎の話題に振られてドキリとはしたけれど、きっと近いうちに聞いてもらうことになるだろうと思っていた。 誰にも話さずに自分で解決しようとしているなら、江美里から電話が掛ってきた時点で、断っていたはずだ。 もし私が誰かに相談するとすれば、いちばん最初に思い浮かぶ相手は江美里だった。 友達が少ないという理由もあるけれど、それだけではない。 私は江美里の、無条件に味方にならない性格が気に入っている。 相談を持ちかけて、変に慰められたり、勇気づけられたりするのは苦手だ。 反対に、叱られたり、余計なアドバイスをされるのも遠慮したい。 ここで答えを出しなさいと言われている気がして、相談したことを後悔したことは何度もある。江美里は寄り添ってくれる加減がちょうど良かった。 「実はね、達郎にプロポーズされちゃった」
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