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達郎の名前に一瞬ドキリとする。
江美里は達郎のことをタッちゃんと呼んでいる。
やはり、その話題になるだろうとは思っていたけれど、どう説明したら良いのか、考えがまとまっていなかった。
でも、そんなことも全部、江美里には見抜かれているのかもしれない。
二十歳になったばかりだというのに、江美里は他人の気持ちに良く気づくのだ。それでも傷口に直接触れるようなことはしない。だから私はつい江美里が年下であることも忘れてしまう。
達郎の話題に振られてドキリとはしたけれど、きっと近いうちに聞いてもらうことになるだろうと思っていた。
誰にも話さずに自分で解決しようとしているなら、江美里から電話が掛ってきた時点で、断っていたはずだ。
もし私が誰かに相談するとすれば、いちばん最初に思い浮かぶ相手は江美里だった。
友達が少ないという理由もあるけれど、それだけではない。
私は江美里の、無条件に味方にならない性格が気に入っている。
相談を持ちかけて、変に慰められたり、勇気づけられたりするのは苦手だ。
反対に、叱られたり、余計なアドバイスをされるのも遠慮したい。
ここで答えを出しなさいと言われている気がして、相談したことを後悔したことは何度もある。江美里は寄り添ってくれる加減がちょうど良かった。
「実はね、達郎にプロポーズされちゃった」
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