レイウッド編〈1〉すり抜ける砂

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 ***  「やっぱり女はいいよな。可愛い声でよがってくるんだぜ」  挑発するように口から出された言葉に、ワタシは愕然とせずにはいられなかった。  甘噛みしていた猫が突然牙を剥いた。  いつまでも餌を与えようとしない主人に向けて。  腹の奥底からふつふつとした怒りがこみ上げてくる。  「へぇ、意外でしたね、女性の扱いひとつ知らないようなあなたがそのようなことをするとは思いませんでした」  自分でも驚くような低い声は、もう餌を与えるどころか、歯向かったことに対する罰を与える方へと考えが傾いていく。  ジェリンは片手間に女を相手にできるほど、器用な男ではない。  つまり、その嘘はいつまでも向き合おうとしないワタシに対する当て付けのようなもの――  「そりゃ、レイ兄だってそうだろ。  レイ兄は常に女をはべらせてるからなー」  「………ませんよ」  「はっ?」  「ワタシは誰一人、一度たりとも女を抱いたことなどありませんよ」  「えっ……!?」  そう、ワタシは一度たりとも女を相手にしたことなどなかった。  正確には、抱けなかった。  言い寄ってくる女達からは、あのおぞましい義母から漂う嫉妬や束縛の兆候が見られた。  だが、交渉人として女たちを訪ねる立場上、女達を無下に扱うような真似はできない。  『亡くなった恋人が今も忘れられない  『しつこい女は苦手だ』  その二つの言葉だけで、契約者の女達は手を引っ込める。  代わり、彼女らは互いを牽制し合うためにワタシに所有印を付けたがった。  それを許したのは、それを見せびらかせた時のジェリンの反応を愉しむためでもあった。  
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