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「あなたはワタシのことが好きなのだとばかり思っていましたが、どうやらそうではなかったようですね……残念です」
「………………!!」
残念です、本当に。
まさかワタシを試そうとするなんて。
自責の念にでも囚われたのだろう表情にはすでに罪悪感が見えていた。
「引き留めたりして申し訳ありませんでした、ではワタシは部屋に戻って寝直しますので」
「ま、待てよ、レイ兄!」
「何ですか、ジェリン?」
廊下の奥に向けていた足を止める。
思わず笑いが込み上げそうになるのを堪え、振り向いたそこにある、ジェリンの子犬のような顔を見た。
「違うんだ、違うんだレイ兄!
嘘だったんだよ。
俺は女と寝てないし、むしろ、迫られたところを全力で逃げた!
キスすらしてねぇよ!
ついでに言えば嫌われてもう二度と誘いは来ない!」
必死に弁解しようとするジェリンの素直さに、悪戯心がむくむくと芽生えていく。
「ええ、知っていますよ、そんなこと。
はじめから分かっています」
「はじ、め…………?」
「やっぱり、そう言えばあなたは素直に戻ってくると思いました、ジェリン。
あなたは実に単純で扱いやすいですね」
一瞬何のことかと反応できずにいた脳が方程式の答えを導き出すと、ジェリンは顔を真っ赤にして抗議するような目を向けてくる。
ああ、これだからジェリンは可愛い。
魅了の霧を纏わせて、思考能力を奪って、そしてそのまま、ワタシの腕の中で――!
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