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一人取り残されたような何とも言えない気分に陥った俺は、せめてもの気晴らしにとダイニングの窓から外を眺め見る。
結構な量の雨は大地に幾筋も幾筋も絶えず降り注ぐ。
元々肥沃なこの土地の水捌けはいいものの、量が量だけに溜まり水は傾斜に沿って流れていく。
大粒の雨に打たれ、薔薇の葉がゆらゆらと不気味に揺れ動いていた。
「あーー、ダメだ。
余計に気が滅入るな……あ?」
薔薇庭園の奥から、広げられたカラフルな二本の傘がこちらへと向かってきていた。
***
「久し振りだな、アド兄。
会わない内に髪が伸びたな」
「ああ、そろそろ切りに行こうかと思ってるところだ」
人間の時間枠ではもう深夜2時を回っている頃合。
久し振りに訪れた二人をダイニングに案内し、俺は久々にアド兄と積もる話を始めようとしていた。
「レイウッドは居ないのか?」
「あ、ああ、レイ兄は最近ここに戻ってきていないんだ。
ふらりとは戻ってはいるんだろう。
食事の補充はしていってくれているみたいだからな」
貯蔵庫には、つい昨日新たに補充された血液パックが並んでいた。
「喧嘩でもしたの?」
黙ってジュースを啜って話に聞き耳をたてていたアルトが不意に顔をあげた。
「喧嘩……というか、まぁ…それが原因だと思われることはあった、たぶん」
その内容までは話すつもりはないけどな。
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