ジェリン編〈2〉いなくなったレイ兄

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 ***  雨だからか?  偏頭痛なのか、頭がズキズキ痛む。  何だろう、思い出そうとしたからか?  人間達が力ある吸血鬼を掃討する手段としてダンピール兵が各地にばら撒かれた。  シャルルローズ家はその中でもとりわけ力が強かったため、数々のダンピール兵を返り討ちにしてきたらしい。  敗北から、手段を変えたダンピール兵は、庭先で訓練していた俺を拐い、当時の当主である両親をおびき寄せる餌にした。  愛されてもいない俺がどうなろうと知ったこっちゃないはずの親がどうして助けに向かったのか、レイ兄はどうしてアド兄と家に残らず、現場にいたのか。  すっぽり抜け落ちた記憶は、はっきりしない。  自室のベッドに寝転んでいた俺は、釈然としない思いから解放される術を見付けた。  思い立ってからの行動は速かった。  当分入ることも、入るつもりもなかったレイ兄の部屋は、いつも通り整然と片付けられていた。  考えるもおぞましい拷問道具類の意味を先日教えられていたジェリンは複雑な思いで部屋を眺め、書類が乱雑に積まれた机に近付いた。  人間は書面で信頼を確認するきらいがある。そこに、つい最近の取引内容が書かれた書類を見付けた。  ばさっと置かれた書類に紛れて、アルビにある宿泊施設の利用明細が目に留まった。  「何だレイ兄……アルビに居るのか…。  同じ場所に居るんなら、アルト達に教えてやればいいのによ」  口に出してみて、次に思い浮かべることは、レイ兄のアド兄に対する感情。  アド兄には所在を知られたくないってことか。冷静に答えを導き出した俺は次に考える。  「居場所を知らせたつもりか……俺に迎えに来いって?  勝手な……どうせ俺のことなんて」  領収証をくしゃりと丸めて、床に投げ捨てた。  ――玩具としか思っていないくせに。
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