レイウッド編〈2〉護るために失くしたもの

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   肩や指先に停まり、天使のように囀ずる小鳥との戯れを愉しんでいたが、世にもおぞましい絶叫が現れ、恐れをなした鳥達はすぐにも飛び去っていった。  馬鹿め、ワタシの助言を無視するからこうなる。  襲撃から僅か数分後の出来事だった。  カフェテーブルから読み差しの書物を掠め取ると、チェアから立ち上がった。  このあとワタシは何食わぬ顔でシャルルローズ夫妻の元へ駆け付けた。  ――今回も失敗だったか。  次はもっとまともに戦える奴が派遣されればいい。    ***  ジェリンに対する風当たりは、アドルフが社交界へと羽ばたいてからますます激化の一途を辿っていった。    食事は床で摂らされ、食事時間に一秒でも遅れようものなら厳しい鞭打ちの罰が課せられた。  雨の日は特に仕打ちが厳しくなる。  雨ざらしの裸木に括りつけられ放置されたジェリンの姿を何度も見ていた。  この頃にはワタシの母も年老い、以前のような美貌に翳りが見えていた。  アドルフの母親は次第に張り合いをなくし、代わりに、その残虐性は彼女の実の息子であるジェリンへと向けられていた。  出来のよい息子と出来損ないの息子。  そして、義母が産み落とした出来がよい息子よりも遥かに強い資質を持って生まれ落ちたワタシ。  馬鹿馬鹿しい。  そんなもので息子への愛情を左右させる父と義母に愛想が尽きた。  だから、ダンピールの立場を存分に利用し、人間に取り入り、こう寄せた。  “ シャルルローズ夫妻を殺す手引きをしてさしあげましょう ”
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