過去への旅路が引き寄せた愛

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 すぐにも上がる断末魔。  鮮血のような赤い髪が無数の刃に変貌し、男の身体を粉々に破壊した。  切り刻まれるパーツが痙攣を起こしながら足元の砂利にぼとりと落ちた。  夥しい量の死臭に恍惚とする母さんの笑みは――記憶を脳に思い描く現在の俺ですら吐き気を催す程の残忍さを滲ませていた。  「あら、少しずつ少しずつじわじわ痛め付けるつもりでいましたのに……つい力を込めすぎてしまいましたわね。  痛かったかしら、これでも端っこから削ったのよ?  ……もっとゆっくり時間をかけて裂くべきだった、勿体ないことをしたわ」  飛散したおどろおどろしい血飛沫が俺の身体を覆った。  母さんは後方の父さんへと合図を送るように微笑する――そして……そうだ。  ゆっくりと進み出る父さんは忌々しげに男の亡骸を瞥し、赤い髪をさらに赤く濡らす俺の身体を――いや、手を縛っていたロープを掴んだんだ。  汚物を掴むようにつまみ上げ、宙に浮いた俺の絶望を眺めた。  「今回のようにまた不埒な輩が見当を謝って同様の事件を起こすことも今後あり得る。  そうなれば、お前の存在が社交界の者達の耳に入ることも考えられる。  我々はそれが非常にまずいのだ、……分かるな、ジェリン」  物を扱うように俺に触れる無関心な父の手は、断崖絶壁の滝壺に向かっていた。  死ぬんだ……ここで。  いや、すぐに死ねるかどうかも分からない。  手足を縛られ、猿轡を噛まされたこの状態で一体いつまで俺の身体は再生を繰り返す?  このまま、生きるも死ぬも選択できない地獄に放られる――  無慈悲にも、俺の身体はふわりと浮き上がり、頂点を迎え、その後一気に急降下していった。
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