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高い岩場の天井が遠く見え、背に灼けるような激痛が迸った。
視界に青いフィルタがかかり、息が止まった。
鼻からごぽごぽと気泡が生まれる。
苦し……い…。
もがこうと精一杯手足をばたつかせようとするものの、きつく結わかれたロープはびくともしなかった。
フィルタを通して見える天井が徐々に遠ざかっていく。
皮膚が剥がされるような痛みに全身を蝕まれ、呼吸ができない状況下、それでも身体は酸素を求めてくる。
死にたい、もう楽になりたい――そう思えども、吸血鬼の本能はそう簡単に俺の意識を、身体を放棄してくれない。
止まろうとする心臓が再生の力で最小限の動きを維持しようとする。
溶けてなくなりそうな皮膚が、肉が再生を始めていく。
気が狂いそうだった。
脳裏に描かれるものは、抱き締めてくれたレイ兄の温もり。
俺を見ていてくれると約束してくれた……
…………
愛されて……いたのかもしれない。
親にも運命にも見放されたこの俺を、抱き締めてくれたのは……レイ兄だけだった。
レイに……い…
霞みかけたぼんやりとした青い世界を眠ったように望む俺の目から、出せる力もないはずの涙が流れ、すぐに水に溶けていく。
――たすけて…
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