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龍正の言葉に、真剣に聞いていた組員たちの目が点になった。
話を半分聞き流していた龍臣も眉間にしわを寄せる。
「…龍正さん、それって当たり前のことじゃないのか?」
なんともいえない空気の中、萩原が声を上げる。
萩原が言ったことは組員全員の気持ちだろう。
「まあそうなんだが、こうしてルールとして形にしておけば、いざというとき言い逃れすることもできないし、確固たる目的があることで組の団結力も上がる。当たり前のことこそ見失いがちになるものだろう?」
そう問いかける龍正に、萩原も他の組員も納得したような顔をした。
龍臣はこういうところが親父のすごいところだ、と思う。
龍正には人を惹きつけ、魅了させる力がある。龍正の言葉には不思議と人を納得させる力があるのだ。
これが頭首の威厳というものなのか、それとも龍正が元々持っている天性のものなのか、どちらかはわからないが、龍臣は父親のこういうところは尊敬していた。
……本人には絶対言わないが。
「頭首!大将ってのは誰なんですか?やっぱり現頭首なんですか?」
すると、佐竹が手をあげ龍正に聞いた。
龍正はその言葉に待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべた。
その笑みを見た龍臣は、薄れてきていた嫌な予感が一気に膨れたような気がした。
「ああ、そのことだが、大将は龍臣にやってもらう」
「………は?」
龍臣は自分の耳を疑った。
ろくなことを言わないとは思っていたが、まさか龍臣を大将に…だなんて。
隣を見れば、憎たらしいほど整った顔を面白そうに歪めて笑う龍正の姿。
「龍臣ももう18だ。そろそろ若頭としての自覚を持ち始めてほしいからな。この戦争が最大の試練になると思え」
そう言って龍臣に視線を投げかけた。
いずれ頭首になる為そういう教育を受けるだろうと思っていたが、まさかそれがこんな形で始まるとは思っていなかった。
しかし呆然とする龍臣をよそに、組員たちは思いの外納得していた。
「そうだな。坊ちゃんも立派になったし」
「若さん強いですしね!」
「若なら大丈夫ですよ!」
「そうですよ、俺らも全力で戦います!!」
組員たちの激励の言葉に、だが龍臣は苦い顔をする。
この流れだとNOとは言えないだろう。頭を抱えたい気分だ。
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