第1章

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龍正の言葉に、真剣に聞いていた組員たちの目が点になった。 話を半分聞き流していた龍臣も眉間にしわを寄せる。 「…龍正さん、それって当たり前のことじゃないのか?」 なんともいえない空気の中、萩原が声を上げる。 萩原が言ったことは組員全員の気持ちだろう。 「まあそうなんだが、こうしてルールとして形にしておけば、いざというとき言い逃れすることもできないし、確固たる目的があることで組の団結力も上がる。当たり前のことこそ見失いがちになるものだろう?」 そう問いかける龍正に、萩原も他の組員も納得したような顔をした。 龍臣はこういうところが親父のすごいところだ、と思う。 龍正には人を惹きつけ、魅了させる力がある。龍正の言葉には不思議と人を納得させる力があるのだ。 これが頭首の威厳というものなのか、それとも龍正が元々持っている天性のものなのか、どちらかはわからないが、龍臣は父親のこういうところは尊敬していた。 ……本人には絶対言わないが。 「頭首!大将ってのは誰なんですか?やっぱり現頭首なんですか?」 すると、佐竹が手をあげ龍正に聞いた。 龍正はその言葉に待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべた。 その笑みを見た龍臣は、薄れてきていた嫌な予感が一気に膨れたような気がした。 「ああ、そのことだが、大将は龍臣にやってもらう」 「………は?」 龍臣は自分の耳を疑った。 ろくなことを言わないとは思っていたが、まさか龍臣を大将に…だなんて。 隣を見れば、憎たらしいほど整った顔を面白そうに歪めて笑う龍正の姿。 「龍臣ももう18だ。そろそろ若頭としての自覚を持ち始めてほしいからな。この戦争が最大の試練になると思え」 そう言って龍臣に視線を投げかけた。 いずれ頭首になる為そういう教育を受けるだろうと思っていたが、まさかそれがこんな形で始まるとは思っていなかった。 しかし呆然とする龍臣をよそに、組員たちは思いの外納得していた。 「そうだな。坊ちゃんも立派になったし」 「若さん強いですしね!」 「若なら大丈夫ですよ!」 「そうですよ、俺らも全力で戦います!!」 組員たちの激励の言葉に、だが龍臣は苦い顔をする。 この流れだとNOとは言えないだろう。頭を抱えたい気分だ。
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