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「龍臣、お前は俺の部下たちにこんなにも信頼されてるんだ。誇りに思え」
隣で龍正が笑う。
龍臣は嬉しいと思う反面、めんどくさいことになったと複雑な気持ちだった。
龍臣side
大将を戦闘不能にさせるか、それとも殺すか…どちらかで勝敗は決まる。
組のルールに反することでない限り、どんな方法を使ってもいい。
食事のあとに親父からそう聞かされた。
長い廊下を歩きながら俺は今日何度目かのため息を吐く。
ルールとやらは今日決まったようだが、戦争はもう始まっているのだ。
その証拠に、昼間血の気の多い輩を10人ほどのしたばかりだ。
今や顔も覚えていないそいつらもルールは知らなかっただろうに、やっていたことは正しかった、ということになる。
そのままある場所を目指していると、隣にふっと気配が降りてきた。
「面白いことになったな。大将?」
「…うるせえ」
笑いを含んだその声の主は亜笠だ。
また勝手に出てきやがって…と思うも、もういつものことだから仕方がない。
そのまま隣を歩き出した亜笠は愉しそうに言う。
「また龍臣の戦う姿が見れるわけだ。ま、どうせお前に敵う奴なんかいないだろ。いたとしても…」
不意に言葉を途切れさせたかと思えば、腕を引っ張られた。
強制的に亜笠の方を向くことになる。
紅い瞳は俺の目をまっすぐ見て、唇がにいっと弧を描いた。
「俺がタツを死なせねえから」
そう言った亜笠の瞳が鈍く光ったようで、ゾクリとした。
なんとなくそのまま見つめていると、大きな手が目の前に現れ…デコピンされた。
「いって…」
「…見すぎだバカ野郎」
亜笠は鼻で笑うと、ふっと霧のように消えた。
おちょくりにきただけかよ。
イラッとしながらも、また歩き出した。
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