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「馬鹿か?巻き込んでるんじゃない。あっちもそれは承知の上、だからここにいる」
闘利の言葉を半ば遮るように龍臣は言う。
それを聞いていた亜笠はため息をついた。
「お前もう少しわかりやすく言えっての。…つまりは、あいつらがこうして俺たちを殺しにくるってことは、殺される覚悟があって、殺されない自身があるからだ。そうじゃないと金もらえるってだけでこんな命の危険がある仕事しねえだろ?だから、それで死んでも自業自得ってわけ。既にあいつらは一般人じゃねえんだよ」
そういうことだろ?と亜笠が龍臣に視線を寄越せば、龍臣も渋々頷く。
どうやら亜笠に通訳されるのが好きでないらしい。
周りの男たちには亜笠の言葉を聞いて顔を青褪めさせる者もいる。
「…だが……」
未だ渋る闘利に、龍臣は言った。
「お前、甘いな」
その言葉に、闘利は目を見開いた。
呆然とする闘利をそのままに、龍臣はこちらの様子を窺う男たちを見る。
立っているのは15人といったところだ。
龍臣の視線に、顔を強張らせる男たち。
「まだやるか?…やるなら、殺られる覚悟でこい」
無表情だった龍臣の表情が、小さな笑みをつくる。
その笑みは冷え切っており、どこまでも残酷だ。
(その目だ…俺はその瞳が好きなんだよ。タツ)
そんな龍臣の表情に、亜笠が執着的な瞳を向けていることに気付いた者は一人もいない。
「お、俺はまだ死にたくないっっ」
「おい!どこ行くんだよ!!」
尋常じゃない龍臣のオーラに、一人、二人とこの場から逃げ出す。
それを、龍臣は感情の籠っていない瞳でただ黙って見届けた。
やがてその場に残るは数人のみ。
人数が減ってしまったからか、それとも龍臣の威圧感のせいか、残った男たちの顔には覇気がない。
なんとなくわかっているのだろう、勝ち目はないのだということを。
今彼らをこの場に縫いとめているのは、意地とプライドだけだ。
残っていた内の一人、バットの男はギリッと歯を食いしばると、龍臣を睨んだ。
「…っくそおおお!!」
バットを振り上げ、男は叫ぶ。
その声は最後の力を振り絞ったかのような、悲痛な響きだった。
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