第2章

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「……疲れた」 ぼそりと呟く龍臣の周りには、5,6人の無残な死体が転がっている。 先ほどまでは確かに息をしていたであろう人の屍だ。 「帰るか」 途中から飽きていた亜笠が欠伸交じりに言う。 龍臣はそれに頷くと、結局血で汚れてしまった服に顔をしかめながらも倉庫の入口へ向かった。 「待て」 それを止める一つの声。 龍臣が振り向けば、闘利がこちらを見つめていた。 「…もうやらないぞ」 まさかさっきの続きとは言わないだろうな、と言外に語る龍臣の瞳。 それに闘利は緩く頭を振れば、そのまま小さく礼をした。 「今日は色々と勉強になった。自分の足りないものに気付けたような気がする。…ありがとう」 突然の闘利からの感謝の言葉に、龍臣と亜笠は目を見開く。 「今度会ったときは全力でいかせてもらう。…失礼する」 闘利は言い捨てると、身をひるがえしその場を去って行った。 「…なんつーか…あんなに真面目な奴俺でも初めて見るわ」 「……ああ」 そんな闘利に、二人は呆然とするのだった。 ―――――その後の十束家では 「若さん!!!」 家に帰って少しの間自室のベッドでボーっとしていると、突然部屋の扉がけたたましく開かれた。 それに龍臣がびっくりして起き上がれば、扉を開けた佐竹の焦った顔が見えた。 「なんだ?」 龍臣が眉間に皺を寄せ問うと、佐竹は必死な形相のまま粟島さんが…といいかけ扉から消えた。その代わりに驚くほど怖い顔の粟島が現れた。 扉の向こう側からは「突き飛ばすことないじゃないですか!」という佐竹の声が小さく聞こえてくる。 「若!!」 粟島は怒りの形相で龍臣の傍まで来ると、龍臣の肩を掴む。 「なんですかあの惨状は!どうしてあんなに死んでるんですか!若はすぐに帰ってくると言いましたよね!?なのにあれから何時間たってたと思ってるんですか!一体なにがあったんですか!しかもふらりと帰ってきて俺になんの報告もなしだなんて…」
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