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「ストーップ!粟島さん落ち着いて!」
突然の粟島のマシンガンのような言葉の羅列に龍臣が目を点にしていると、佐竹が粟島を止めに来た。
普段から強面な粟島だが、怒った時の表情はまるで鬼のそれだ。
流石の龍臣も少しびびっていた。
「…なんか…悪かった」
呆然と龍臣は言う。
すると粟島はさっきよりかは表情を和らげ(といってもまだ十分怖いが)、龍臣の肩から手を離した。
「…わかってくれればいいです。全く、案じるこっちの身にもなってください」
渋い顔でそう告げる粟島に、龍臣は目を見開きなんとなく佐竹を見る。
佐竹は龍臣の視線に気づくと困ったように苦笑した。
どことなくむず痒い心臓部分に、龍臣は顔をしかめてそっぽを向いた。
「で、一体何があったんですか?…話してもらうまではここを動きませんからね」
次いで粟島の口から出てきた言葉に、龍臣はめんどくさいと思わずにはいられないのであった。
「………―――ということです」
暗い闇の中に、声が反響する。
それを黙って聞いていた男は、口の端をニイっと釣り上げた。
「…おもしれえ。いいな、そいつ」
嗤うその声はひどく楽しそうで、それでいて狂気を纏っていた。
男の雰囲気に、跪き頭を垂れていた部下は恐怖から自らの体が震えているのに気付いた。
「…で、では、私はこれで…」
「待て」
何かに急かされるようにその場を離れようとした部下だったが、それを男の声が止める。
「それでお前、なんでここにいんの?」
暗闇で光る鋭い瞳に睨まれ、部下は蛇に睨まれたように体が動かなくなる。
「まさか、逃げてきた訳じゃねえよなあ?」
その言葉に、部下の額に大量の冷や汗が溢れ出す。
この場所に無傷でいるということがどういうことなのか、誰でもわかるであろうことをこの男はわざわざ聞いてくるのだ。
それが一層恐怖を駆り立てる。
「それ、は…」
「俺の組織に腰抜けはいらねーんだよ」
男はそう言い、カチャリと拳銃を取り出す。
「まっ……!!」
部下の静止の言葉も意味はなく、乾いた銃声の音にかき消された。
倒れ行く部下に男は興味なさげな瞳を向ける。
「……十束龍臣…早く会いてぇなあ…」
男は楽しそうに、愉しそうに、嗤う。
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