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「煙草は体に悪いと何度言えばわかるのかな、龍臣」
突如聞こえてきた柔らかくも少しの呆れを含んだその声。
視線だけを頭上に向ければ、目の前に立っていたのは長身の男だった。
クリーム色の髪に一部だけ赤メッシュを入れ、柔和な笑みの似合うその男は一見するとどこぞの王子様のようだ。しかし、彼は人間ではない。
見た目は人間となんら変わりのない男性の姿をした彼の名は藤。龍臣の召喚獣である。
召喚獣とは、この世界の人間で魔力の扱いに長けている者なら誰もが一体は連れている使い魔のようなものだ。
人間は誰しも生まれつき魔力を持っている。しかし誰もが魔力を扱えるわけではない。
人によって使える者、使えない者に分かれる。数で表すと約4割の人間が扱えるといって言いだろう。
魔力は人によって質や量も様々だが、大抵の人間がその魔力を使い最初にすることが、召喚獣との契約である。
(召喚獣を連れている者は大体組織に入る。(ほぼ強制的に入れられる))
召喚獣は大きく分けて天属、魔属、獣人の三つに分類されるが、ほとんどの人間は一人につき一体だ。
召喚獣を召喚し使役するには多くの魔力が必要であり、大抵の人間は一体使役するのが限界だからだ。
しかし極まれに、複数の召喚獣を使役するものもいる。もちろん生まれつき魔力の量が多いからに他ならない。
十束龍臣もその一人だった。
藤と呼ばれる男は、天属のフェニックス。
召喚獣にももちろん魔力の強いもの、弱いものとあり、強ければ彼のように人型になれるものもいる。
「…いいだろ。少しくらい」
「駄目だよ。早死にしたくないでしょ?」
龍臣が一般人なら腰を抜かしそうなほど鋭い目つきでにらむも、藤はびくりともしない。
彼に取ったらこんなことは日常茶飯事なのだろう。
「そうだそうだ。お子様にはまだ早い」
すると第三者の声が聞こえ、藤の手から煙草が消えた。
龍臣が藤から視線を横にずらすと、そこには先ほど龍臣が吸っていた煙草を口に咥える真っ赤な髪の美丈夫の姿が。
藤と同じようにスーツに身を包み、整った顔には意地の悪い笑みを浮かべている。
龍臣や藤よりも高い身長の彼も、召喚獣だ。
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