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「だがまあ知っていて損はないだろう。玄武の頭首の名は玄冥昂夜[ゲンメイコウヤ]。とにかく規格外な奴だと聞いている。戦いを好み、戦うことしか頭にないような奴だそうだ。外見は俺もよく知らないんだが、でかいらしい」
「濃いな…」
予想以上に危なそうな奴だ。戦いが好きとか頭イカれてんじゃねえのか。
しかし口ぶりからして親父も頭首には会ったことないのか?
「この前の集まりで会わなかったのか?」
「ああ。あの時は白虎と朱雀としか話ができなかった。玄武に話をする気はないようだったな」
「ふーん…」
まあ俺でもそんな話し合いとかめんどいからお断りだが。
「龍臣、次に他の組織の奴らに会うとするなら、玄武の可能性が高い。あそこは荒れているからな、どんな手を使ってでもお前を倒そうとしてくるだろう。お前はそこいらの奴より何倍も強いと俺は思っているが、油断だけはするなよ。気の緩みは自分を陥れる。今の自分に慢心せず、危なくなったら誰かに頼れ」
親父のいつも以上に真剣な眼差しに、無意識に姿勢を正す。
改めて親父にこういうことを言われるのは久しぶりだ。それほど今回の戦争の規模はでかいのだ。
俺は小さく頷いた。
「…龍臣は大事なことは一人で背負おうとするところがあるからな。もうお前も頭首になるんだから、組員たちを上手く使うことを覚えろよ?」
「…わかってる」
「ならいい。話はそれだけだ、そろそろ夕飯の時間だな。お前も着替えてこい」
「ああ」
親父はまた優しく笑うと、俺の頭を軽く叩いて寝室の方に向かって言った。
なんだか気恥ずかしくなって、そそくさと部屋を出た。
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