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早朝の寒さに、龍臣は珍しく早く起きた。
窓から漏れる朝日はまだ淡く、太陽が昇りきっていないことがわかる。
「寒いな…」
春もそろそろ終わる季節だが、今朝は一段と冷える。
龍臣は露出している腕をさすると、もう一度寝る為にも布団にもぐった。
しかし龍臣の眠りはすぐにはばまれることになる。
「坊ちゃん!」
部屋の外から龍臣を呼ぶ声がし、次いで扉を開ける音。
声からして萩原だろうが、勝手に入ってくるなと何度言ったら…
「萩原…入ってくるな」
「お?起きてるなんて珍しい」
「そんなことどうでもいいだろ」
「ああそうだな。坊ちゃん、ちと面倒なことが起きてよ。すぐ広間に来てくれ」
茶化すのはいつものことだが、すぐに表情を引き締め真剣な顔つきになる萩原に、龍臣は眉を寄せた。
面倒…?と呟く龍臣に、萩原は来ればわかると残しそのまま部屋を出て行った。
全く龍臣の部下になる男だというのになんてざっぱな対応だろうか。
(まあ昔からあんなんだったが…)
こんな早朝に起きてしまったことを後悔しながらも、行くしかないので龍臣はベッドから下りた。
私服に着替え、広間に出向く。
広間に入るとそこには組員全員が集められており、中は騒然としていた。
誰もが神妙な顔つき話し合っており、何かあったのだと察知する。
龍臣は広間の奥に龍正の姿を見つけ、傍に歩み寄った。
龍正は私服の着物だ。
「親父」
「ああ、おはよう龍臣」
「…なんだよ朝っぱらから」
龍臣の姿に一度は表情を緩めた龍正だったが、すぐに真剣な顔つきになる。
何か良くないことが起こったのだ。
「今朝方立花の家で大規模な爆発があった」
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