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戦争の始まりそうなこの時期に他の区域に行くことを何人もの組員が反対したが、龍正はそれを笑い飛ばし俺が簡単に死ぬわけないだろうと言って、数人のボディーガードを連れて行ってしまった。
ちなみに龍臣は反対しなかった。
自分で決めたことをそう簡単に曲げるような人ではないとわかっていたし、簡単に死ぬようなたまでもないと思っていた。
というかぶっちゃけ関わるのがめんどくさかった、というのが一番の理由だ。
組員が準備に動き回っているため手持無沙汰な龍臣は、広間を出てすぐ隣にある台所へ入った。
広間もそこいらの宴会場より広いが、台所も普通の家庭の何倍ものでかさだ。
料理を作っているのは女性組員が3人と男性組員が7人。見覚えのある女性組員が指示を飛ばしている。
なんとなしにその光景を見ていると、その中でも身長の高い男が龍臣に気付き声をかけてきた。
「お、坊ちゃん。起きたのか」
龍臣のことを坊ちゃんと呼ぶのは一人しかいない。
先ほど話題にも上った幹部長の萩原だ。
「……」
近づいてきた萩原を見る龍臣の目は冷たい。
龍臣は坊ちゃんと呼ばれることに難色を示しているのだが、小さい頃から龍臣を知る萩原は全く気にしていないようだ。どうせやめろと言ってもやめないのだが。
龍臣のジトリとした視線に気づいていないのか気付いていない振りをしているのか、萩原は笑顔で話し始める。
「いやー忙しくて参ったぜ。普段なら俺も坊ちゃんみたいに見とくだけでいいんだがな。なんでかみんな俺が休むと睨んでくるんだよ」
それはアンタが原因だからだろ、とは心の中だけで呟いておく。
「そうだ!坊ちゃんも手伝ってくれよ、久しぶりに坊ちゃんの手料理食いてえし」
「は?なに言って…」
突然の萩原の提案に龍臣は即拒否しようと思った。
…が
「え?若頭料理できるんですか!?」
「初めて聞いた!」
「作ってくださいよ!」
「ばっか若に何言ってんだよ!」
「えー俺も食べてみたいです!」
と、なにやら他の組員たちも騒ぎ出した。
「みんなも坊ちゃんの飯食べたいよな!」
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