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話を聞けば、粟島は少し前に立花家から帰ってきたようだ。
そしたら朱雀が攻めてきたことを聞かされるわ親父は病院に運ばれてるわ龍臣が倒れてるわでキャパオーバーだった。
ちなみに龍臣はあれから5時間も眠っていたらしい。
そりゃ確かに不安にもなる。
龍臣は少し申し訳ない気持ちになった。
「それで、親父は?」
一番気になっていたことを聞けば、佐竹が難しい顔で口を開く。
「頭はまだ目を覚ましていません。命に別状はないようですが、撃たれた時の影響で何日かは昏睡状態が続くかもしれないと言われました」
「そうか…」
思ったよりも重症らしい。
例え藤でも外傷は治せたとしても、精神面までは治せない。
すぐに帰ってこれそうにはないということか。
龍臣は気分が落ち込みそうになるが、今落ち込んでも何も変わりはしない。
切り換えるためにも、肺の中の空気を全て吐き出すくらい大きく息を吐く。
そんな龍臣に、佐竹と粟島が柔らかい笑みを向けていた。
「龍正さんが帰ってくるまでの間、実質頭は坊ちゃんだぜ」
すると扉の方から声が聞こえたかと思うと、萩原が姿を現した。
「俺が…?」
「そりゃあな。坊ちゃんは若頭なんだからよ」
確かに龍正が動けない今、頭首の仕事は次期頭首がやるものであろう。
正直やりたくないというのが本音だ。
「親父め…早く帰ってこい…」
「えぇぇ…若さんさっきまでの落ち込みようどこ行ったんですか…」
「落ち込んでなんかない」
呆れた顔をする佐竹に、龍臣はふんと鼻を鳴らした。
素直じゃないのか、それとも仕事がよっぽど嫌なのか…。
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