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少し緩んだ空気に、しかし萩原は表情を引き締め龍臣に鋭い眼差しを向けた。
「…坊ちゃん、これからどうする」
龍臣をまっすぐ見る萩原の瞳からは、憤りが窺える。
萩原がここまで感情を抑えてものを言う姿は珍しい。
それほど今回のことは頭にきたのだろう。それは青龍の誰だって同じことだろうが、龍正と萩原はもう何十年もの間柄なのだ、誰よりもその気持ちは強いはずだ。
龍臣はその視線を受け止め、ずっと考えていたことを形にして口に出した。
「…親父を撃った奴を捕まえる」
静かな口調で吐き出したその言葉にはどんな感情が含まれているのか、声だけでは窺い知れない。
加えて少し顔を俯かせている為、表情さえも読み取ることはできない。
萩原も粟島も口を閉ざす中、佐竹は少し不安そうな顔で龍臣を見た。
「若さん、それは…」
復讐をする、ということなのか。
最後まで聞かずとも、佐竹が言わんとしていることは龍臣にもわかった。
龍臣は佐竹の不安を払拭するように薄く口角を上げ首を横に振る。
「憎しみがないと言えば嘘になるが、別に親父は生きてるし、こういう世界だから復讐とか言ってたらキリがない。…だが、青龍に歯向かったことに関してはきちんと落とし前つけさせる」
「若さん…!」
「若…」
龍臣の発言に感動したような表情を浮かべる佐竹と粟島。
それは青龍の次期頭首としての自覚を持ち始めたことに対してなのか、いつも以上に長文を喋ったことに対してなのか…多分どっちもだ。
二人の視線になんか変なこと言ったのだろうかと若干居心地の悪くなる龍臣。
「いつの間にか大きくなりやがって…」
さっきまで真剣な表情をしていた萩原も笑みを浮かべ、龍臣を見るのだった。
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