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龍臣は内心驚くも顔には出さずに聞き返した。
「母さんの味によく似てる」
「……あっそ」
思いがけないその言葉に、少し顔が熱くなるのがわかったが、龍臣はそれを認めたくなくて視線をそらした。
そんな息子に龍正が暖かい眼差しを向けていることに気付いたのは、それを目撃した組員のみだった。
みんながそろそろ食べ終わるというころ、龍正が箸を置いた。
「みんな、聞いてくれ」
きた。
龍臣はため息が出そうになるのを抑える。
広間に響き渡った龍正の言葉に、組員たちがそれぞれ箸を置いて視線を向ける。
「今回俺が他の区域に行ってきたことは知ってるな?」
龍正の言葉に目で肯定する組員たち。
「そこで俺はそれぞれの頭首たちと話合ってきたわけだが…これから起こるであろう戦争のルールが決まった」
ルール、と聞き、組員たちの顔に困惑が浮かぶ。
戦争というのだから、ルールなんて必要あるのかと。
龍正はそれをわかっているとでも言うかのように頷く。
「みんなが思っているように、戦争にルールは必要ないだろう。だが陽の国の四区を合わせた組の人数は数えきれないほどだ。例え頭がいるとしても、今回の戦争に乗じてもめごとを起こす奴も少なからず出てくるだろう。そんなときにいつでも下の奴らを見張れるよう、ルールはあった方がいいという結論が出た」
確かに、組員が多いところは全ての組員に目を行き届けることは困難であろうし、一般人の中にも血の気が多い輩はいる。なにをしでかすかわからない。
「まあルールというが、そこまで数が多いわけではないし至ってシンプルだ。まずは自分の組で定められている決まりを守ることが大前提だ。自分の組のルールを守れない奴に今回の戦争でのルールを守れはしないからな」
組員たちは真剣に頷く。
青龍で定められている決まりは、大きく分けると三つだ。
一つ、命令には背いてはならない。
二つ、一般人には手を出さない。
三つ、組織に忠実であれ。
他の組も大体似たようなものではないだろうか。
「…ルールだが、守ることは一つ。今回の戦争で勝利するためには、大将を討たなければならない。それだけだ」
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