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◆◆◆ 大きなグランドピアノは、ピカピカに磨かれていた。 その上に乗った銀太は、窓から見える月の光で浮かぶグランドピアノを優しく撫でる。 「昔昔、禁忌の実験をしようと12人の研究者が集まった」 私は、ピアノも開かず冷たいピアノの蓋の上に頬を乗せ、銀太の御伽話に見入る。 「彼らは、自分たちの名前を明かさず、コードナンバーで呼び合った。時計の時間としてね」 ふふ、と笑うと膝に乗せている星丸を撫でる。 星丸は、まだ元気はないものの、銀太の指に頬ずりする程度には甘えてくれるようになった。 「時間で呼び合うって面白いね。『2時はまだ来ないのか?』とか意味不明だわ」 「そうだね。彼らしか分かる必要がないもんね」 「禁忌の実験って何かしら。お兄ちゃんもよくお金にならない自分の好奇心を満足させる実験をしてたわ。動物の声を記録してその音の高さから気持ちを読み取るとか、ね」 クスクスわらうと、ピアノに落ちて反射する。 ピアノとベット、そしてソファに机。 必要最低限のものしか置かず、生活感もないこの広々した空間に私と銀太と星丸だけ。 すごくわくわくする。
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