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お兄ちゃんは、脳科学の研究をしていて、家に帰って来るのをたまに忘れてしまう事があって私は家に一人で居ることが多かった。 両親は早くに亡くなっていて、施設にいた私を迎えに来てくれたのが、確か私が8歳のころ。――今から10年近く前。 『20時』 『長針』 『秒針』 お兄ちゃんに連れてこられた場所で、銀色の髪の男の人が私の髪を撫でてくれた。 地面に届きそうな、銀色の髪に、綺麗で汚れなんてなくて純白の白衣は、風になびくと天使の羽のようだった。 お兄ちゃんが、誰かに時間を聞かれたのか話しているのを覚えている。 場所は、ここ。蘭聖学園。 お兄ちゃんと、その天使のような人は笑顔で会話をしていて、居心地が悪かった。 その時に、遠くから男の子が泣く声がしたんだ。 お兄ちゃん達から遠ざかるのを申し訳なく思いつつ、私はその泣き声のほうへ進んで行く。 校舎の影に隠れて蹲って泣いていたのが、――銀太だった気がする。
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