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◆◆◆
それは夜を引き裂くような、甲高い悲鳴だった。
消燈時間は22:00.
それまでは各自の個室の風呂を浴び、BGMが流れている間は勉学の時間のはずだった。
その悲鳴は20:00.
寮の人間は皆、起きている時間だった。
急いで廊下へ飛び出した俺は、目を疑う。
誰一人、部屋から出ることもせず廊下はBGMのクラシックがずっと流れているだけ。
時刻と悲鳴から考えて、夢琴の身に何かあったのは間違いないだろう。
例えば、過去を思い出してしまったり、
きっかけやトラウマになる行動を起こしたり。
店長の調べでは、夢琴は優秀なピアノの才能がありコンクールで賞をとる実力の持ち主。
だが、先ほど会った時はその記憶さえ彼女は曖昧だった。
もしかして彼女のきっかけは、ピアノかもしれないし、何かの曲かもしれない。
「珊瑚!」
考えながら傘を差していた俺の首根っこを、美美が掴んだ。
「最上階の銀太の部屋からだよ、この匂い」
「匂い?」
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