120人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
脚立を、部屋の隅に片付け、珊瑚君の方へ戻ると彼は呆然と私を見ていた。
「どうしたの?」
「貴方は、銀太さんに俺と接触しちゃいけないと注意されてませんでした?」
「あ――。そうだったけ。まあいいよ、銀太はそんなことで怒る人じゃないもん」
確かに、銀太は珊瑚君を歓迎していなかったけど、それは異質なものは統制を乱すからじゃないかな?
この個性がいらない学園には特に。
「じゃあ、貴方に質問がいっぱいあります」
「うん?」
「お兄さんは本当に死んだんですか?」
傘から、片目だけ此方を見上げて珊瑚君が言う。
「思い出すなって言われてるんだけど……」
「何で警察からも逃げてるの?」
「うーーん」
珊瑚君は、どうやら私のあの日の記憶を知りたいらしい。
触れてはいけない、あの日も事に。
「銀太という人物は、何者?」
その質問には目を見開いてしまった。
銀太は銀太だ。
そう言おうとして、初めて会った日の泣いている銀太が脳裏を過ったから。
最初のコメントを投稿しよう!