22/41

120人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
「君は、私から何を知りたいの?」 「君に思い出して貰いたいだけです。君のお兄さんとのご遺体の場所と、お兄さんとある人物の事を」 遺体――。 その言葉に現実に引き戻される。 いくら銀太に守って貰っていても、私には逃げてはいけない現実がいくつもある。 ただ、ここでは、考えることさえイケないような気になっていくの。 「キミがお兄さんの最期をを見たたった一人なのかもしれません」 「そうだね」 「貴方が忘れてしまったら、お兄さんはこの世の全ての人から忘れられてしまいますよ? 良いんですか?」 この世の全ての人から――。 そうだ。そう。 私は、お兄ちゃんの最期の言葉を聞いた。 最期の言葉に、大粒の涙が零れた。 でもそれがどんな言葉か思い出せない。 思いだしたら駄目。 この平穏が崩れていくようで。 私は逃げているんだ。 「貴方の記憶が、全ての鍵になっているんです」 傘を差し私を見上げる少年。 深く濁った瞳は、大人びていて、雰囲気や表情から見えるあどけなさとはチグハクで。 珊瑚君は何に苦しんでいるんだろう。
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加