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「君は、私から何を知りたいの?」
「君に思い出して貰いたいだけです。君のお兄さんとのご遺体の場所と、お兄さんとある人物の事を」
遺体――。
その言葉に現実に引き戻される。
いくら銀太に守って貰っていても、私には逃げてはいけない現実がいくつもある。
ただ、ここでは、考えることさえイケないような気になっていくの。
「キミがお兄さんの最期をを見たたった一人なのかもしれません」
「そうだね」
「貴方が忘れてしまったら、お兄さんはこの世の全ての人から忘れられてしまいますよ? 良いんですか?」
この世の全ての人から――。
そうだ。そう。
私は、お兄ちゃんの最期の言葉を聞いた。
最期の言葉に、大粒の涙が零れた。
でもそれがどんな言葉か思い出せない。
思いだしたら駄目。
この平穏が崩れていくようで。
私は逃げているんだ。
「貴方の記憶が、全ての鍵になっているんです」
傘を差し私を見上げる少年。
深く濁った瞳は、大人びていて、雰囲気や表情から見えるあどけなさとはチグハクで。
珊瑚君は何に苦しんでいるんだろう。
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