23/41

120人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
「私なんかが力になれるなら」 興味が湧いた。 その悲しい瞳に。 晴れた日に傘を差すキミに。 「ありがとうございます」 「で、どうしたらいいの?」 「昨晩の話をまずは聞かせて下さい」 昨晩? 「昨日は自習時間をさぼって、銀太の自習室へ忍び込んでたの。ここの寮って1~4人部屋に別れてて。大体は4人なのかな。銀太と私だけ一人部屋みたい」 ぽつりと浮いてしまったわたしと銀太は、二人の切り離された世界で生きているような錯覚に陥ってしまう。 「彼の自習部屋にね、ピアノがあって――」 そう、私はピアノの椅子に座った。 指が固まっていなかったのが嬉しくて安心できて、ほっとした。 「夢琴さん?」 「や、ピアノ、ピアノをね、弾いたの。簡単な曲よ。銀太と初めて会った時にはもう両手で弾けていた……はず」 「へぇ。どの曲ですか?」
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加