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「私なんかが力になれるなら」
興味が湧いた。
その悲しい瞳に。
晴れた日に傘を差すキミに。
「ありがとうございます」
「で、どうしたらいいの?」
「昨晩の話をまずは聞かせて下さい」
昨晩?
「昨日は自習時間をさぼって、銀太の自習室へ忍び込んでたの。ここの寮って1~4人部屋に別れてて。大体は4人なのかな。銀太と私だけ一人部屋みたい」
ぽつりと浮いてしまったわたしと銀太は、二人の切り離された世界で生きているような錯覚に陥ってしまう。
「彼の自習部屋にね、ピアノがあって――」
そう、私はピアノの椅子に座った。
指が固まっていなかったのが嬉しくて安心できて、ほっとした。
「夢琴さん?」
「や、ピアノ、ピアノをね、弾いたの。簡単な曲よ。銀太と初めて会った時にはもう両手で弾けていた……はず」
「へぇ。どの曲ですか?」
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