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「とりあえず、弾いてみないとだね。音楽科と銀太の自習室ならどちらが安全なの?」 「音楽科の校舎に侵入できるなら一番だけど、でも、あの自主室も気になるんだよね」 銀太の自習室。 確かに必要最低限のモノしかなかったけど。 「君は、銀太くんが好き?」 「へ?」 ぼーっと考え事をしていたら、不意打ちすぎて思わず目を見開いてしまった。 「好き?」 好き。 その言葉は、声に出すのは簡単だったけれど、他人に言いたいとは思わない。 珊瑚君に言った途端、薄っぺらく聞こえてしまいそう。 私が銀太を好きなのは、そんな簡単な気持ちじゃない。 深く根付いて離れられない。今は、彼が全て。 「好きなんだね。じゃあ、スパイみたいな真似させられない。弾くだけでいいよ。何処でもいいや」
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