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酒場のベルが来客を告げる。
辺りが暗くなった頃、新たな客がやってきた。
混み合う店内を見渡し相席を求む店員の問い掛けに対し、こくん、と頷く。
「では、ご案内致します。」
店員の後ろについて歩くその姿に、酒場の客がちらちら振り返る。
皆がざわつくのも無理はない。
やってきたのは妙な出で立ちをした6、7歳位の子供。
旅人の多いこの村では、知らない子供が1人で来ること自体が珍しく、それ以上に目を引くのは、背中に背負った明らかに身長以上ある大刀と大きすぎる衣服、そして太ももまである長い髪。
衣服を引きずらないようにと紐で手繰り寄せているようだが全く意味を成しておらず、歩く度にズルズルと地面に擦れる音がする。
「どうぞ。」
案内されたのは、怒鳴り疲れて眠ってしまったミランの目の前の席。
その子供は、到底扱えるとは思えない大刀を机に立てかけ、案内された席にちょこんと座るが、その小さい身体には大きすぎる椅子に両の足は行き場を無くし、ぷらぷらと宙を舞う。
珍しい様子にざわついていた酒場の客も暫くすると落ち着き、店内はいつもの賑やかな酒場へと姿を戻した。
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