【 桜 木 】

10/23
前へ
/121ページ
次へ
「天魔はどこだ?」  果心堂が口を開いた。天魔とは、彼の妹、涼の事だ。魔はたいてい彼女をその名で呼ぶ。  彼に向けるのとはまるで違う。冷たい目をして、有坂が応えた。 「姫さまの事をそのような俗称でお呼びいただくのは心外だ。人妖ふぜいに気安くされるようなお方ではないぞ」  かちん、と来たらしく、果心堂が腕組みをして言い返す。 「あのような破壊巫女。天魔なぞという名も勿体ないわ。アレで良い、アレで。で、どこにいると?」  彼の頭上を飛び越えて、はや、視線で喧嘩がはじまっている。 桜木はオロオロした。  しかし、そこはそれ、有坂の方があたりを慮る能力があるようで、
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加