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「有坂さんも、ご一緒に食べて行かれるんでしょう?」
桜木が尋ねたのは、有坂がだいたい常にその反対の心づもりであるからだ。
案の定、イエ、と苦笑交じりに、生真面目な青年は首を横へ振った。
「私はまだまだ仕事中ですし、すぐに戻って今回の復命書を作りはじめませんと、後々手ひどい目にあいますので」
彼に残念そうな顔をされ、逆に少し嬉しげに微笑み返してくる。それが、この男の彼との距離感を表していると言っていいだろう。
「またの機会に改めましてぜひ。しかし、姫がお越しになるまでの間、ここのご案内はいたしますよ。もう、たっぷり三周はいたしました。現地ガイドなみにご案内できる自信がございます」
お任せください、と、有坂は穏やかに目を細めた。
★★★
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