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有坂がどこか複雑な表情で、首を振る。
「本当ならば、もう、姫がお越しになっても良い時間。何やら不測の事態が起こったやもしれません」
言われて、桜木も表情を厳しくした。
「あの子が何か危険な事になっているということですか?」
有坂は慌てたように首を横に振った。
「いえ! いえ、姫に限ってそのような。ただ、予定外の事が起こったのは間違いございますまい。このたびの仕事は、ただの調査でございました。それが、こうまでお越しが遅れるとは考えがとうございます」
そのまま、有坂はこれまで自分から目を合わせようとしなかった果心堂にわざわざ目を合わせる。
けして気の合う相手とは言い難いが、それだけで互いの考えは一致したようだ。
果心堂が大きく頷くと、彼の腕を引いた。
「四朗。ひとまずここは出るぞ。我らが居ては、かえってこやつらも動きにくかろう」
「で、ですがッ」
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