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そのまま、女の大きく開けた口が降りてきて、彼の口をひたりとふさぐ。
息ができない。
口内に青い葉を噛んだような味が渡る。
女の異様に長い舌が自身の舌をからめとる感覚は、口づけというより、むしろ蹂躙だ。
さして長い間ではなかった。
が、何か異物のようなものを押し込まれた感覚が喉にある。
飲み込むまいとするのに、それは勝手に喉を下った。
意外なことに、それで、女は満足したように、彼にからゆっくりと身を離し、
「まァ。素敵。睨んでいても、綺麗」
彼を見下ろして、あながち冗談とも思えない、陶酔した表情で、腕組みをして彼を愛でるように眺めてくる。
広い座敷の中で、相手の真意をはかりかね、彼は立ちはだかる女をただ見上げ続けた。
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