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「四朗……ッ、無事か!」
短く叫んだ。
彼は人ではないが、彼の護りたいただ一人の相手は、人だ。
人はすぐ魂が「解ける」。
「案じるな、人妖ッ。気を失ってはおいでだがこちらは大事ない!」
望む人の答えはなかったが、代わりに可愛げのない官吏が低く声を返してくる。
人妖と呼ばれるのにはカチンと来たものの、大事な友人が無事と聞いて、そこはひとまず安堵した。
「良し。天魔の腰巾着、お前、その身を呈してでも四朗を護れ。もし、置いて逃げでもしたら、その血をすべて吸い尽くす」
誰が腰巾着だと言わぬばかりの視線が座敷の奥から投げられたが、答えは彼を満足させるものだ。
「もとより、お前に脅されるまでもない。宮さまに何かあっては、この有坂岳彦、お目付として姫さまに顔向けができんッ」
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