第1章

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あの最低兎から、低俗な日本語を教え込まれた朴さん…… 電話の向こうの事態をどう解釈したんだろう? 「電話しないの?」「メールだから」 「緑に光ってるんなら、電話じゃねーの?」 「………………」 こいつがいても、 いなくても、 電話なんてかけられない。 「………まぁいっか。…… …また、アイツが来たら困るだろうから、もう少しいてやろうか?」 珍しく魚男が、紳士的な気遣いを見せてきて、 本音、すごく嬉しかったのに素直になれない私は、 「…………のっ……」 「乗り換えるとかじゃないからな、 凛々子からあんたに。」 兎と魚を同じ種の人間とした返事をしようとして、すぐに後悔をした。 「……ここにいても、メリットないわよ?」 「俺、引きこもりだから、話し相手が欲しいんだよ」 「…………」 この人は、他の男たちとは、 ちょっと、違う。 「たまには、外の世界と接点持たなきゃだめだろ?」 『……働けばいいのに』 別に、 孤独で寂しがってる風でもないけど、 「ふぅん。いいよ。魚の話なら聞くよ」 今日なら、 山本ケイタのこと、 聞けるような気がした。 「じゃ沖縄の魚の話しようか?」 私の傷を知ってる赤の他人、 もちろん、 恋人でもない。 友達でもないけど_____ 「眠くなったら布団しくよ」 「……じゃ、凛々子の……」 「はいはい」 深海の底のような暗闇を、 さ迷って、 泳ぎ疲れた 同士 のような気持ちになってしまっていたから。 image=489293112.jpg
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