第1章

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「ほら、沖縄の魚、スズメダイだけでもこんだけいるんだぜ?」 「うん……」 ふぁッ…… 何度目のアクビだろう? 「お前、さっきから俺が見せてやってる画像見てアクビばっかりしてんな」 一応布団は敷いたものの、横になることもなくその上で体操座りをして、ケイタがスマホで検索した沖縄の魚達の画像を見つめていた。 「いや、さすがにこんなに魚ばっか見てると飽きてくる。 生ならいいんだけど……」 山本家の水槽を見たあとじゃ、こんな小さな画面の写真を見ても物足りやしない。 「お前んち、パソコンねーのかよ?」 「ない。スマホで十分」 「仕事で使ったりしねーのかよ?」 「そんな仕事してない」 「アナログ人間か」 「………………」 仕事もしてないで、魚ばっかり見てる奴にそんなこと言われたくないわよ。 「先に寝る。あなたはゆっくり沖縄の魚でも眺めててくださいな」 兎から助けてもらったと思って邪険に扱わないけど、 ……そもそも、 この間、火事になるところ助けたし、 家を覗いている変質者だとわかっているのに警察に訴えてないし、 「客より先に寝るのかよ?」 私の家で、好きな魚のうんちくを自由にさせてあげているのだから、それで十分だと思う。 「私、明日、仕事なのでー……」 ニート野郎が一番ムカつくであろう言葉を吐いて、布団にゴロッとなる。 睡魔の添い寝が心地よかった。 「おい…………まだ、終わってねーよ」 ……のに、 ケイタが、 私の耳元に息を吹くように、睡魔も軽く飛ばしてしまう。 「なにが?」 飛び起きると、ケイタが嬉しそうにまた、スマホを見せてきた。 「人魚の話」
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