第1章

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てっきり、いつも回覧板を間違う、ここら辺の住人かと思ったら、 「どーせ凛々子は、仕事終わったら新しい男と会うんだろう?」 姉のダメンズ履歴書の最終欄に載ったウサギ男が、開けたドアを閉められないように、しっかり体を挟んでいた。 「……何か用ですか?」 まだ記憶に新しい屈辱の出来事が、ウサギ男との再会で鮮明に甦り、 常備的になっている胸の吐き気が、今夜は強く私を襲ってきていた。 「心配で来たんだよ」 「………………なにが?」 また、触れてきたら 今度こそ、 警察に訴えてやる。 「マグロ女が、俺の体を忘れられないんじゃないかと思って」 今度こそ、 もう少し自分を大切にしていきたいと 思い始めていたから。 「……帰ってよ」 Riririririririri! テーブルのスマホに、今度は電話の着信音が鳴り響く。 ……誰だろう? 「なんだよ、そんなツンケンすんなよ?ツンデレだっけ?」 直ぐに思い浮かんだのは、 今日連絡先を交換したばかりの朴さんだ。 「それも見当違い。そんなんだから、凛々子にフラレるんだよ」 あの人は既婚者で、 会社で有名な遊び人……。 「はぁっ?!お前、何様?上から目線で話してんじゃねぇぞ?!」 それでも、 あのキスに、 こんな嫌悪感は抱かなかった。 「ちょっと!勝手に入らないで!ここ、私の……」 「うるせー!マグロ女ー!お前みたいな可愛くもねー根暗な奴は、俺ぐらいの男の処理器になってればいいんだよ!」 私と、繋がりたいと____ キスをしたいと思ってくれる人がいてくれて、 「ちょっと!!やめてっ!」 0だった自分の価値が、少しだけ上がったような気がしていたから。
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